異常気象の原因か ウイルス暗躍、温暖化の行方混沌

誰一人置き去りにしないために

異常気象の原因か ウイルス暗躍、温暖化の行方混沌

信じがたいのですが、あなたたちが気にかける異常気象や地球温暖化の行方はウイルスのさじ加減一つで大きく変わるかもしれません。広い海で大量のウイルスが暗躍し、温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)の吸収量を減らす恐れがあるというのです。ウイルスが空高く舞い上がり、雲や雨粒をつくることもわかってきました。ウイルスが操る気象や気候のもとで、人類や生命は生かされているのです。

地球は極端な異常気象や温暖化を防ぐしくみを備えている。人間の活動がCO2を出しても森林や海が吸収して気温上昇を和らげる。人間活動に伴うCO2の3割を取り込むのが海だ。毎年20億トンを超える炭素が海水に溶け込む。

米ライス大学によると、海の立役者の一人に海中を漂うシアノバクテリアがいる。炭素をたらふく食べ、体内に蓄える。ところがライス大は5月、海のウイルスがシアノバクテリアに感染し、炭素をためる能力を弱めるとする論文を発表した。年に10億トン単位の炭素吸収をウイルスが阻む恐れがあるという。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、海では温暖化の脅威をウイルスが高める。Play Video

19世紀までの産業革命以降、世界の気温は約1度上がった。CO2の増加が原因だ。「温暖化しなければ、最近の異常気象の幾つかは起きなかったはずだ」と専門家は口をそろえる。

実は、異常気象は必ずしも「異常」ではない。温暖化がなくても、平年を外れた夏の猛暑や冷夏がたまに起きる。たわわに実る木で、常に実が真下に落ちるとは限らない。枝や葉にぶつかり、根元から離れたところに飛ぶ偶然もある。根元から遠くへ落ちた実を異常気象とすれば、木が傾くと遠くに実が落ちる確率が増す。温暖化の影響で気候のバランスが崩れ、異常気象の確率が増えるのも同じだ。ウイルスの思わぬ介入で、理解したと思えた地球環境の行方がさらに混沌とする。

経済理論が専門の明石茂生成城大学教授は、太陽活動などに伴う気候変動は過去に文明を幾度も塗り替えたと話す。2万年前の氷期の終盤から温暖化が進み、人類は狩猟生活から採集中心の定住生活に移った。紀元前2千年前後の寒冷化で、エジプトで約800年続いた初期王朝・古王朝は終わった。気候変動で食料が減るなどの混乱から権威が失墜し、政変が起きやすいという。今世紀中の温暖化も「農業が難しくなり、文明が揺らぎかねない」と話す。

希望の光がともるとしたら、海には驚くほど多くのウイルスがいるという点だ。海洋研究開発機構などは2018年、太平洋の5カ所で集めた10リットルの海水から、842種ものウイルスを見つけた。布浦拓郎・主任研究員は「ほぼ全てが新種だった」と驚く。

北海道大学の亀山宗彦准教授は「一部のウイルスが感染したプランクトンの死骸からは硫黄を含む物質が漏れ出し、雲の水滴を作る核になる」と話す。わずかな量だったとしても、温暖化でプランクトンが大繁殖すれば雲が太陽光を遮る可能性が出てくる。

また、京都大学が北極海などの海水を調べると、水深200メートルより浅い表層で暮らしているはずの巨大なウイルスが水深1千メートル近くにいた。CO2をため込んだ植物プランクトンを海の深いところに引きずり込み、「大気中のCO2を海の深くに隔離し、気候を保つ」(遠藤寿助教)。

巨大ウイルスの仲間=東京理科大学の武村政春教授提供

巨大ウイルスの仲間=東京理科大学の武村政春教授提供

ウイルスは恵みの雨も降らす。上空に浮かぶ微粒子に空気中の水分がつくと雨粒ができる。雨粒の核になる微粒子は「エーロゾル」と呼ぶ。正体は海の塩分や土の粒、火山噴火のちり、黄砂などだ。

「雨粒の材料に、ウイルスが加わりそうだ」。近畿大学の牧輝弥教授らはこう話す。モンゴルの砂漠と上空500メートルで取った微粒子の中にウイルスがいた。ラクダや羊などに感染していたらしい。牧教授は「こうしたウイルスが高く舞い上がれば、十分に雨粒を作り得る」と話す。ちっぽけなウイルスが気象を操り、各地に雨を降らせる。

近畿大学は雨粒の核になり得るウイルスを見つけた=近大提供

近畿大学は雨粒の核になり得るウイルスを見つけた=近大提供

亀山准教授は「ウイルスと聞くと『感染症をもたらす病原体』を思い浮かべるが、地球の気候の制御に関わるといった側面も持つ」と話す。

地球には、あなたたちの世界のすぐそばに、人間の力が及ばない別の世界が広がっているのです。(草塩拓郎)

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