三菱ケミカル和賀社長 リサイクルで「変革起こす」

三菱ケミカルの和賀昌之社長

三菱ケミカルの和賀昌之社長

二酸化炭素(CO2)やプラスチックごみなどの削減が世界的な課題として浮上する中、三菱ケミカルが環境への取り組みを一段と強化する。4月に設置した社長直轄の「サーキュラーエコノミー推進部」で、事業や他社との連携を通じた環境対応を推進する。リサイクル関連企業との提携も進める。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もある中、環境配慮の取り組みを加速させる狙いを和賀昌之社長に聞いた。

――「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」に注力する狙いは何ですか。

「地球が危篤状態にあるなか、治療するための技術的なイノベーションを起こしたい。(政府が掲げる)2030年にCO2を13年比26%削減をするためには石炭火力発電を止め、電気を使うのをやめ、基礎化学品のエチレン製造設備も止めれば達成できるかもしれない。ただ、それでは社会の発展はなく、全く自慢にならない。そのすべを考えるシンクタンク(頭脳集団)として推進部を設置した」

――どのような活動をするのでしょうか

「三菱ケミカル全体を見渡し、どの事業が循環型経済に関連する事業を手掛けているかマッピングする。その上で、どのような発展性があるか、関連性があるかなどを考える。例えば同じプラスチックでも一緒にリサイクルできない場合がある。『コーティングしたり色を変えたりして分別しやすくすればどうか』など、様々なアイデアが飛び交うような場にしている」

――東京大学とも循環型経済の実現へ産学連携すると発表しました。

「民間企業の発想だけでなく、アカデミアの研究を含めたイノベーションを起こすための連携を考えなければならない。例えば人工光合成の触媒の研究などは、化学産業の持つ技術とアカデミアの視点をつなげたい。また環境問題では日本は情報発信拠点ではなく、受け取り拠点になっている。リードしているのは欧州の政府や非政府組織(NGO)などだ。民間企業だけで情報のアンテナを張るのは苦しく、アカデミアの学会を通じたつながりや政府機関との連携強化にも注意を払っていきたい」

――リサイクルの取り組みは現業を圧迫する可能性があります。

「リサイクルが進むと理論的には新規材料の製品の需要は落ちることがあるだろう。ただ、それは世の中が必要とする実需なのだろう。瞬間的には新規材料の製品の生産量を落とすことになるかもしれない。だが一方で、リサイクル技術は誰かが確立しないといけない。そしてその技術は商品価値を持つため、先手を打ちたい」

三菱ケミカルが開発を進める海洋生分解性のレジ袋

三菱ケミカルが開発を進める海洋生分解性のレジ袋

――新型コロナウイルスの影響も広がっています。

「自動車向けで素材の納入量が落ちている。その一方、テレワークの進展などで半導体やタブレット関連など伸びている産業もある。この分野への素材の出荷は昨年に比べ増えている」

「当社でも本社では通信回線の容量を増強し、社員にデバイスを配布して足元ではテレワークを中心にしている。自動化、デジタルトランスフォーメーション(DX)はコロナ対応を機に加速させたい。プラントの保全や事故予防などに人工知能(AI)を使うなどで効果が期待できる。何百という提案が各現場で進んでいる。大きな競争力になるのは間違いない」■成長との両立を模索
 三菱ケミカルは環境対応の事業戦略を相次いで打ち出している。8月にはドイツで、炭素繊維のリサイクル事業者2社の事業を取得した。プラスチックの再資源化を手掛けるリファインバースにも約2億円を出資。産業廃棄物のリサイクルに強い同社と三菱ケミカルのノウハウを融合させ、効率的なリサイクルや環境に配慮した素材の設計をめざす。海洋生分解性のあるレジ袋の提案も始めている。
 同社は環境問題への対応を通じて事業構造を改革し、成長にもつなげようとしている。その司令塔になるのが4月に設置した社長直轄のサーキュラーエコノミー推進部だ。東京大学との産学連携では、現在はコスト高で商用に至っていない環境技術をいかにビジネスとして成功させるかといった、持続可能な社会への転換のあり方を共同研究する予定だ。
ESG(環境・社会・企業統治)投資の潮流が拡大している。素材の納入先企業や消費者からも化学メーカーの社会的責任を問う声も高まっている。同社では目下、2021年から始まる次期中期計画を策定中だ。環境を通じた成長戦略の本気度と成果が一層、問われそうだ。
(企業報道部 福本裕貴)

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