米、半導体に補助金2.6兆円 生産海外依存に危機感

誰一人置き去りにしないために

米、半導体に補助金2.6兆円 生産海外依存に危機感

【ワシントン=河浪武史】米連邦議会が半導体の国内生産を促すため、新たに250億ドル(約2兆6000億円)規模の補助金を投じる検討に入った。巨額の公的支援で中国に対抗し、インテルなど米大手の開発力を底上げする。半導体生産の海外依存を放置すれば、産業競争力の低下に加え、安全保障や軍事力にも響きかねないとの警戒が背景にある。

米情報技術・イノベーション財団の分析によると、世界の半導体市場は最大手のインテルを筆頭に、米国勢のシェアが47%を占め、2位の韓国(19%)、3位の日本(10%)を大きく引き離す。ただ、米ボストン・コンサルティング・グループによると、生産能力でみれば米国は世界の12%を占めるにすぎない。

米エヌビディアや米クアルコムなど半導体回路の設計に特化したファブレス(工場なし)企業が多く、生産は台湾など海外に委託するケースが多いためだ。

軍事技術にも直結する半導体の米国内での生産が空洞化すれば、供給ルートが不安定になり、安全保障面でのリスクとなる。逆に中国の生産能力の世界シェアはすでに同15%と米国を上回っている。10年後には24%に拡大し、台湾を抜いて世界で首位に立つと予測される。

中国の台頭を警戒する米議会と政権は、半導体への巨額補助金で、サプライチェーンの米国内への回帰を求める。半導体への公的支援は2021会計年度(20年10月~21年9月)予算に盛り込む方向だ。上院、下院ともそれぞれ独自の半導体支援法案を超党派で審議しており、両院は一本化の作業に入った。製造業の米国への回帰を求めるトランプ政権も、法案の成立を支援する方針だ。

26日までに明らかになった超党派の両院一本化法案の原案では、半導体工場や研究施設などに、連邦政府が1件あたり最大30億ドルの補助金を支給する。半導体工場は建設費が100億ドルほどかかるケースもあり、競争力を大きく左右する。150億ドル規模の基金をつくって10年かけて運用する案が有力だ。

ほかにも安全保障上、一段と機密性の高い半導体生産には、国防総省などが50億ドルの開発資金を供給する案がある。米半導体ではインテルが「次世代品」の微細化技術で、台湾の受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)に後れをとる。挽回へ研究開発にも50億ドルの予算を追加配分する。半導体への補助金は連邦政府だけで合計250億ドル規模に達し、州・地方政府も税優遇などで支援する。

中国は官民一体で半導体を基幹産業に育てており、14年には国策基金を設立した。19年までの投資額は1400億元(2兆1700億円=205億ドル)に達した。これに地方政府の関連基金も加えると累計の投資額は5千億元を超す規模だ。25年には半導体の70%を国内で生産する目標も掲げた。ハイテク分野は米中の主戦場となっている。

市場主義経済の米国はこれまで特定産業に巨額の補助金を投じることには慎重だった。先端技術の研究開発などに公的予算を配分してきたことはあったが、工場の建設などに補助金を直接投じるのは異例だ。ハイテク分野の公的支援合戦は自由な市場競争をゆがめる懸念がある。

半導体は米国有数の輸出産業で、巨額の補助金の投入は世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する可能性もある。今回の補助金構想はTSMCなど海外企業が米国生産する場合も対象に含める方針で、米議会関係者は「不当な輸出補助金にはあたらない」という。原案には、日欧など同盟国と共同で最新半導体を開発する「多国間基金」の創設も盛り込んだ。国際批判を和らげる腹づもりだ。

米中両国が半導体産業を巡って補助金合戦に踏み出せば、日本なども対応を迫られる公算が大きい。日本もかつて、エルピーダメモリやルネサスエレクトロニクスなど半導体企業を公的支援してきたが、いずれも不振に陥った後の”敗戦処理”の色彩が強かった。世界のハイテク分野の市場環境は、国家間競争の色彩を一段と強めている。

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